「情けは人の為ならず」ということわざがあります。
元々の意味は、「情けは自分の心の満足のためにかけるものであって、見返りを求めるものではない」ということ。
ところが最近では、「情けをかけるとかえってその人のためにならない」という意味に解釈する人が増えているそうです。
しかし心理学の研究では、子どもの頃に人助けや思いやりのある行動をしていた人は、大人になってから高い給料を得ていることが明らかになっています。
サマリーをシェアします。
2019年、イギリス、オックスフォード大学のフランシス・ヴァーガンスト博士を筆頭著者とする、子ども時代の向社会性と将来の年収の関係についての研究結果が発表されました。
向社会性とは、相手の気持ちを理解&共感し、自分よりも相手の都合を優先させようとする心情や行動のことです。
この研究では、カナダのケベック州で1980年~1981年に生まれた男女2,850人を、1985年から2015年までの30年にわたって追跡調査しました。
子ども達が5歳または6歳の時に通っていた幼稚園の先生による行動評価を入手し、子どもの不注意度、多動性、攻撃性、対立性、不安性、向社会性を調べました。
また、同じ参加者が33歳から35歳になった時点での、所得税申告書で報告された年収データを入手しました。
子どものIQや家庭環境を調整し、極端なケースはサンプリングから除外した上で、子ども時代の行動と成人後の年収との関連を検証しました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、5歳から6歳の時点で、不注意度、攻撃性、反抗性の高かった男児は、30年後の年収が低い傾向にありました。
2、5歳から6歳の時点で、向社会性の高かった男児は、30年後の年収が高い傾向にありました。
3、25年のキャリアにおいて、上記2つのグループの年収差は77,000ドル(約850万円)に達していました。
4、5歳から6歳の時点で不注意度の高かった女児は、30年後の年収が低い傾向にありました。
5、女性の場合は不注意度のみが年収と関係していました。
6、これは男女間の賃金格差だけでなく、向社会性の高い女性ほど、医療や教育など高収入ではないが社会的指向性の強い職業を選ぶ傾向が強いためかもしれません。
7、不注意度の高い男女の子どもや、攻撃性と反抗性が強く向社会的行動が少ない男児を早期にモニタリングし、適切な支援を行うことは、本人にも社会にも長期的なメリットがあると考えられます。
出典:JAMA Psychiatry
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2736346
子どもの頃、仲間を思いやり、親切な行動を取る少年は仲間との関係が良好になりやすく、思春期の問題行動が少なく、教育達成度も高くなり、大人になってからの年収増につながっている可能性があります。
その反対に、幼少期に仲間と喧嘩したり、指示に従わなかったり、課題を完了しなかったりする男子は、学校の成績が悪化しやすく、大人になってからも職場での評価が低くなりやすく、収入の低下につながっている可能性があります。
つまり、幼稚園の先生に聞けば、将来どの子が高収入を得る可能性があるかが分かるかもしれないということ。
子ども向けの絵本や昔話には、強欲な人が失脚し、親切で善良な人が成功するお話が沢山ありますね。
それらが単なるおとぎ話ではなく現実であるというのは、なんだか希望が持てます。
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