子どもへの虐待は、心理的にも社会的にも多くの悪影響を及ぼすことは、すでに良く知られています。
ですが、親が子どもを怒鳴ったり、お尻を叩いたりして躾をするのはありふれた光景で、虐待とは思われていません。
むしろ親の方は、子どものために良いことをしていると思っています。
素直で優しい子どもほど、「親は自分のためを思ってやっているに違いない」と思い込もうとするでしょう。
しかし、そんな厳しい親に育てられた子どもは、恐怖心の強い大人になる可能性があることが、研究で明らかになりました。
サマリーをシェアします。
2019年、アメリカ、ベイラー大学のヴァレリー・ラ・ブワッソンニエール・アリザ博士を筆頭著者とする、厳格な育児が子どもに及ぼす悪影響についての研究結果が発表されました。
この研究では、13歳から16歳までの84名の思春期の子ども達を対象に、恐怖条件付け課題を与えました。
恐怖条件付け課題とは、耳をつんざくような悲鳴を聞いたり、恐れている顔の表情を見たりしてもらう課題のことです。
そして、彼らの脳をスキャンして、脳の機能や活性の度合いを調べました。
彼らを10年間にわたって追跡調査し、親からうけた仕打ちの度合いに応じてグループに分けました。
研究の結果、次のようなことがわかりました。
1、厳格な親を持つ若者の脳は、そうではない若者の脳とは異なった方法で恐怖心を処理しており、恐れを抱きやすい傾向にあることがわかりました。
2、特に繊細な子どもほど、厳しい親の元で育つと、脅威に対して非常に敏感になる傾向がありました。
3、それは、次のような行動に関連していました。
○精神的な発達が劣る。
○親子間の感情的な結びつきが弱くなる。
○子どもが他の子どもを殴る可能性が高くなる。
○子どもが将来、パートナーを殴るリスクが高まる。
4、特に長期間にわたって厳格な子育てが行われた場合、子どもの脳の発達や感情の処理方法に深刻な影響を及ぼす可能性があることがわかりました。
出典:Biological Psychology(2019)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0301051118301248?via%3Dihub
体罰が子どもに与える影響は深刻です。
将来の人間関係や結婚生活にまで深刻な影響を及ぼしかねません。
日本の学校教育では、以前のような体罰は批判の対象とされ減りつつありますが、親のしつけとしての家庭内での体罰は未だに容認されています。
それは一見ありふれた普通の躾のように見えますが、子どもに深刻なダメージを与えてしまいます。
昔からの伝統とか、代々続く家系の習わしとか、それぞれ事情があるのかもしれませんが、少なくとも心理学の研究によって導かれた結論は「厳格な子育てには大反対」ということ。
虐待は言うまでもありませんが、体罰だけでなく、言葉による脅しもいただけません。
将来自分の子どもが、他の誰かを傷つけたり、傷つけられたりするなんて耐えられませんよね。
もし繊細なお子さんなら、なおさら慎重な配慮が必要です。
他人に何を言われようと、躾が甘いと批判されようと、世間の誰かの基準に自分を合わせる必要なんてありません。
親子の絆を大切に、子どもの心を壊さない子育てをしたいものです。
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