子どものいじめという深刻な問題があります。
この問題が根深いのは、いじめが無くなればそれで終わりではないこと。
いじめが終わっても、被害者の心の傷を癒すにはさらに時間がかかります。
心って目に見えないし、測定するのが難しいから、深刻な状態なのに放置されてしまうこともありえます。
本人が声をあげない限り、周りが気付いてあげられないなんて歯がゆいですね。
2018年の研究で、いじめは心を傷つけるだけでなく、脳の構造を変化させていることが明らかになりました。
サマリーをシェアします。
イギリスの、キングス・カレッジ・ロンドンのエリン・バーク・クインラン博士らは、イギリス、アイルランド、フランス、ドイツの682人の参加者を対象としたプログラムにおいて、継続的な調査を行いました。
研究者らは、参加者が14歳と19歳の時に、高解像度の脳スキャンを行いました。
また、14歳、16歳、19歳の時に、いじめられたことがあるかどうか? どの程度いじめられたか?のアンケートに答えてもらいました。
その結果、682人のうち36人が慢性的ないじめを経験していたことが判明しました。
彼らのデータを、慢性的ないじめを経験していない、他の参加者のデータと比較しました。
その結果、次のようなことがわかりました。
1、思春期に仲間からの慢性的ないじめを受けた人は、尾状核と後頭葉という2つの領域で、脳の体積が小さくなっていました。
2、これは、報酬への感受性、モチベーション、心身の調整力、注意力、感情の処理などに影響を及ぼすと考えられます。
3、また、精神疾患のリスクを高める可能性があることが示唆されます。
4、実際彼らには、19歳の時点で不安を強く感じやすい傾向が見られました。
5、この脳の構造の変化は、正常な脳の発達を妨げる可能性があります。
6、思春期の脳は発達過程にあるため、特にいじめによるダメージは大きいと考えられます。
出典:Molecular Psychiatry
海外の研究ですが、衝撃的です。
若者の3割が仲間から深刻ないじめを受け、その扱いに耐えているとは憂慮すべき事態です。
何も知らない加害者たちは、遊び半分のつもりかもしれません。
そして被害者たちは、我慢してその場をやり過ごせばいいと思っているかもしれません。
しかし、そのダメージはその後数十年に及ぶ可能性があるということ。
理不尽な暴力に、だまってひたすら耐えるなんて言語道断と言えるでしょう。
仲間内のいじめには早期に介入し、子どもたちの心身と脳を守らなくてはなりません。
でも、犠牲者は子どもだけとは限りません。
家庭内DVやモラハラなど、他の暴力や虐待にも当てはまりそうです。
もし家庭内という閉じた空間で、長年虐待を受け続けたら?
同じように、病理的なダメージを負ってしまう可能性がありえます。
虐待環境から離れられればOKではないということ。
傷ついた心身と脳について放置せず、誰もが専門的なケアを受けられるよう願っています。
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